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MIKADO INTERVIEW by NAOKI INOSE



Mikado[G:G.Czerkinsky/P:P.Borel]
Czerkinsky
G.Czerkinsky
デュオ「MIKADO」との対話

−ミカドという名前をつけた動機はなんだったのでしょう。
フランスでは、ミカドはよく知られた言葉で、すぐ連想するのが子供のゲームです。
−そんなゲームがあるんですか!?
細い竹の棒を使う日本式のゲームなんですが、ご存じないんですか、本当に? じゃあ説明しますが、細い棒を積み上げ、プレイヤーが順番に一本ずつ抜き取ります。もしほかの棒を動かしてしまうとファウルになり、次の人に順番が移ります。勝ち負けは、取った棒の得点の合計によって決まります。
−日本でも将棋で似たような遊びがあることはあるけど........
わたしはこのミカドゲームを男と女の関係を象徴するものとみて、「MIKADO」というグループ名と同じタイトルの曲をつくりました。愛しあう男と女は、まるでミカドゲームを演じているようだという設定です。何かを得ようとするとき、誤ってほかのものを動かすと何も得られません。また一人が動くとその相手あるいは周りが動きます。しかし、ゲームが終わると勝者もなく敗者もなく、ただ恋人たちがいる......というふうな曲です。
わたしたちは、フランス音楽を現代的に、多少テクノポップなものにすることを考えています。しかし、将来は電子楽器のまったくない、ピアノとギターだけの音楽をつくりたいと考えています。ですから、現代的なロックンロール音楽の流れだけではなく、フランス音楽の伝統を受け継いでいるといってよいでしょう。特徴があるとすれば、観念的、抽象的音楽ではなく、映像的イメージを聴く人に伝えられる音楽をめざしている点です。
わたしたちがミカドという名前で日本でコンサートをすることに、なにか問題がありますか。
−現在の日本ではまったく問題ないと思います。実際なんの障害もなかったでしょう。ミカドというのは日本のエンペラーのことですが、昔はそう呼ぶのをはばかってその住むところ、それも門だけをとって通称としていたのです。前の戦争に負けるまでは天皇は神とされ、それを中心とするイデオロギーが支配的でした。
そうですか。うちの母親は単純素朴な女ですから、「日本に演奏旅行に行く」と話したところ「ミカドは皇帝の名前だから、そんな名前をつけていると警察に引っ張られる。注意しないと......」といって心配しました。きっと大戦中の記憶があったのでしょう。
−かえって、今の日本の若い人びとのほうが、そのへんがピンとこないのかもしれません。
ところで、きょう、あなたがたにお訊ねしたいのは、音楽のことではありません。ミカドという名前をつけているあなたがたが、どのような人間なのかということに興味があります。

Borel
P.Borel
そういうことを訊いてもらえることがいちばん嬉しい。音楽雑誌のインタヴューをいくつか受けましたが、ああいうありきたりの質問にはじつはうんざりしていたところです。
わたしたちはフランスでは「クライシス・チャイルド(危機の子供たち)」と呼ばれる世代です。貧しくて生活に困るわけでもなく、社会とか国家に重大な不満を抱いているわけでもない。わたしたちにはふたつの選択が可能でした。ひとつはまっとうな仕事を見つけること。別の選択は、そうした仕事につかずに、お金のない困難な生活スタイルを甘受することです。音楽、映画、詩や小説、そういうクリエイティヴな世界に首を突っ込んだ暮らしです。わたしたちの選択は後者でした。
そういうことを考えていたのも、ミカドというネーミングに関係あるかもしれません。日本のミカドは政治的権力を持っていませんね。禅でいうところの無のようなものではないでしょうか。思うに、わたしにとって「ミカド」というのは、芸術などいろいろな創造が行われる前の無の状態のシンボルなのです。
東京は世界一の大都会で、無数の人間がひしめきあってあくせく働き、同じく無数の車がせわしげにクルクル走り回っています。ところがその真ん中に、濠と森に囲まれたなにもない場所があるんですね。そのなかは空虚そのものです。おそらく日本人にとって、この空虚な中心があるかぎり、生活は緑につつまれ、清水に恵まれ、静寂が訪れ、そして究極において無に帰することが可能なのでしょう。
−とても、的確な分析だと感心して聞いていました。日本人は世界中から非難されるほど働きつづけますが、それは、あなたの指摘する空虚な中心があるせいなのだろうと思うのです。しかし、その空虚な中心と、同じ比重でそれに対応したものがきっと心のなかにあるのです。
えっ? どこにあるとおっしゃいましゃいましたか。
−日本人の心の中に、東京のど真ん中にあるのと同じ空虚があるのですよ。
うーむ。
−このルポルタージュ(「ミカドの肖像」)の旅は、そこを起点としていくのです。
なるほど、わたしたちがそんなふうに日本の新しいミカドの物語の最初のシーンに登場できるなんて、なんと光栄なことか。運命が「MIKADO」を帝(ミカド)に結びつけてくれたんですね。
−そう。あなたがたがミカドという名前とその意味を、現代のフランスで考えることに至るまでには長い前史があったのです。お二人が原宿にたどりつくまでの間にね。そして、ピテカントロプスエレクトスから数百メートルのところに、ミカドが出発するときの専用のステーションがあるんですよ。
ミカド専用のステーションがあるなんてそんなこと、まったく知らなかった。

To be continued.....


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